私たちの獣医療は、動物とのコミュニケーションを中心に成り立っています。
診察と治療、その他犬と飼い主さんのケア、あらゆる面での核が「鈴木式ハンドリングメソッド」です。
当院では、どんなワンちゃんも診療台でじっとして、おとなしく獣医に診察させてくれます。
人が腕力で押さえつけることは一切なく、触診も注射もスムーズです。
「他の病院では、大暴れしたのに・・・なぜ!?」とびっくりする飼い主さんが度々いらっしゃいます。
そのヒミツが鈴木式ハンドリングメソッドにあるのです。
超能力などではなく、鈴木の経験に基づいて体系化したコミュニケーションの技術です。
※「ハンドリング」にはいくつかの意味があります。
私たちは「犬とともに生活する上での意思疎通、コミュニケーション」という意味で使っています。

動物が動かないよう人が身体を固定することを「保定 / ハンドリング」といいます。
人間でも病院の診療台に上げられると緊張するもの。
動物も同じで落ち着きを失って動く犬や猫を獣医さんが保定するのは 一般的な行為です。
しかし、私は獣医の勉強をしている頃から強引な保定をしたことがありませんでした。
力づくで保定しなくても動物が落ち着いているからです。
当院に来た犬がとてもリラックスしているのは私たちと犬が初めて会った瞬間に「あいさつ」ができているから。
とはいえ、寄っていって声をかけたり、身体をなでたりはしません。
犬はコミュニケーションのほとんどを視覚で行います。
しぐさや態度で「私がここの主です。あなたの安全を保証します。」ということを犬に伝えます。
では、具体的にどうやって伝えているのかでしょう?
人と犬では身体のつくりが違います。
戦いなどで急所を隠すとき、人はふつう横を向きますが(ボクシングの構えのように)、犬は正面を向きます。
初対面の犬に人がいきなり正対すると警戒されてしまいます。
そうならないよう、私たちもまずは身体の側面を犬に見せて接します。無理に目を合わせることもしません。
アイコンタクトは、本来、注意をこちらに向けた犬の視線に人の視線を合わせることで、はじめて信頼が生まれます。
また、人に「パーソナル・スペース(それ以上近づかれると不快になる距離)」があるのと同じく、犬も他の個体との距離感があります(犬のサークル)。サークルの大きさは、犬種ごとに異なります。
例えば、ビーグルはグループ(パック・群れ)で熊を追うなど、狩りのパートナーとして活躍してきました。10~20頭ほどがひとかたまりで活動し、常に近くに仲間の犬がいる環境。犬種の生い立ちからして、ビーグルのサークルは小さいのです。同じ猟犬でも、テリア種は単独で行動するので、サークルが広くなります。犬種に合わせた距離感で接することが、警戒心を解くカギになります。
このように、私たちは犬のコトバで彼らに相対しているからこそ、腕力を使う必要がないのです。

鈴木式ハンドリングメソッドには他にもたくさんのポイントがあります。
全てをここでお伝えするのは難しいので、飼い主さんやスタッフに良くお話しするポイントをご紹介しましょう。
犬ではなく人をトレーニングする

鈴木式ハンドリングメソッドは犬への「しつけ」ではありません。
例えば一般的な語学と同じような「人のスキル(技能)」です。
身につけるためには人がトレーニングしなければなりません。
人間以外の動物は基本的に「今」を生きています。
過去の記憶はありますが、犬の行動はその瞬間の人の態度や行動をそのまま反映していると考えてください。
どんなにやんちゃな犬も当院ではリラックスしてくれるのですから。
犬とあなたは「見える世界」が違う。どちらが合わせるのが早い?

生き物の種によって世界の見え方・感じ方は違います。
私たちにとって、世界は豊かな色や質感を持っていますが、他の動物にはモノクロの線だけに見えるかもしれません。
多くの人は、「おすわりを学習させよう」「噛んじゃダメ!」など、犬に対して一方的に要求してばかり。
犬に対して人のコトバを理解させようとしているのです。
鈴木式メソッドでは人が犬のコトバを理解するよう努力します。
より賢いはずの人間が犬の見ている世界を理解するほうが犬に学習してもらうよりよほど簡単です。
「ボス」ではなく「班長」であれ

飼い主と犬の関係を語るとき、「上下関係」「主従関係」を明確にするべきだといわれます。
確かに犬がリーダーになると、家にいても、散歩をしていても、人を守ろうとします。
これは、犬にとっては大変なストレスで病気にもつながります。
人は、犬のリーダーであるべきです。
しかし、犬の社会のリーダーは、「ボス猿」のように絶対的な存在ではなく、他の犬を強い力で支配することはありません。言うなれば「班長」くらいの感覚。
人が無理矢理言うことを聞かせようとしても犬は理解できないのです。
ほめるか、ほめないか

班長は部下が少しくらい指示を間違えても、どなったり、手を上げることはありません。
鈴木式ハンドリングメソッドでも、犬をしかったり、まして叩いたりは絶対にしません。
良いことをしたときはそれと分かる方法で明確にほめます。
間違えたとき、意思疎通ができなかったときは、怒るのではなく「ほめない」だけで十分なのです。
すべてのベースは観察すること

思えば私は子どもの頃から動物が好きで扱いにも長けていたようです。
特別な能力はありませんが動きを見る目がとても良いのだと思います。
自分がどんな態度、行動を示せば、動物がどのように動くのか。
些細な動きから、彼らのコトバを感じていたのだと思います。
鈴木式ハンドリングメソッドでも、まずは犬をよく観察することが大切です。

鈴木式ハンドリングメソッドは、犬の心身の健康に大いに役立ちます。
治療にお越しいただき、メソッドに興味を持たれた方には、別途トレーニングコースをご用意しています。
先述通り、犬へのしつけではなく、飼い主さんへのトレーニングです。
メソッドを学ばれる方には、生活のパートナーとして犬と接していただきたいと考えています。
単なる愛玩の対象では、かわいがり、健康を心配するまではできますが、犬が抱えている気持ちやストレスまでは思いが至りません。
パートナーになり、私と一緒にじっとワンちゃんを観察すればきっと彼らのコトバを理解し、話せるようになります。
ぜひ、一度ご来院いただき犬と私たちのコミュニケーションをご覧ください。

動物に過度な緊張や興奮があると、触診・望診の見立てや血液検査の結果が狂います。
鈴木式メソッドでリラックスした状態にすることで身体からの情報を性格に得られます。

最小限のストレスでトリミングの処置が終了します。
動物の精神状態が安定していれば作業効率も上がり、トリミング時間の短縮にもつながります。
トリミング後の体調不良を招きません。

スタッフたちの立ち居振る舞いが犬猫たちに与える影響は大きいものです。
鈴木式メソッドを活用することで動物たちがリラックスできる環境を作っています。
また、お散歩などで他の犬に吠える子でも、違う犬のようにゆったりお散歩してくれます。

手技療法(ハンドセラピー)、理学療法の一種です。
薬や器具などを使わず、手で整体治療などを行い、筋膜・腱・関節の緊張を和らげ、痛みを取り除く治療法です。
メソッドを用いれば、触診で十分な情報を得ることができ、効果を犬たちに聞きながら治療を進められます。

犬ではなく飼い主さんに対するトレーニングです。
人が犬との対話技術を磨くことによって、犬との生活が変わります。
犬たちはストレスから解放され、各種病気の予防にもつながります。